シンガポールの食生活と食費
海外への移住を検討するときに、仕事や治安、物価などとならんで確認しておきたいのが「食事」。グルメなひとにとっては言わずもがな、そうでないひとも「食が合わなくて長期滞在が難しい」なんて経験者の話を聞くこともあるので気をつけたい。
日本には「日本食」があるように、シンガポールにも「シンガポール料理」というものがある。人種同様、中華系、マレー系、インド系など、いろんな食文化が入り交じっているのが特徴だ。
煮込まれた鶏肉と鶏のスープで炊かれたごはんがセットになった「チキンライス」、蟹にチリソースをからめた「チリ・クラブ」、豚肉をとろけるまで煮込んだ「肉骨茶(バクテー)」などは日本でもよく知られている。
シンガポール料理って、美味しいの?
「美味しい、美味しくない」は、その人の好みに「合う、合わない」ということなので一概には言えないし、僕もシンガポール料理をすべて食べたというわけではないが、日本人の口との相性はいいと思う。
なにを食べてもすごく辛(から)いとか、見た目が度ぎついとか、日本では食材として絶対に使われてないものが使われるとか、そういう生理的に受け付けられないものに出くわしたことは、滞在する3ヶ月間で今のところない。
ただ、「食事」は味だけでは決まらない。食べる「場所」が変われば、食材の質や接客対応、客層も変わる。すると、たとえ同じメニューでも味の感じ方は変わるだろう。そしてもう一つ、「食費」がリーズナブルかも確かめておきたい。
シンガポールの外食は高い。
シンガポールの主な食事の仕方は「レストラン」「ホーカーセンター」「自炊」の3つ。
「レストラン」は、種類が充実していることが特徴。いろんな人種が集まっているから、中華料理、マレー料理、インド料理、インドネシア料理といった具合に、フードコートや飲食街にはいろんなお店が並んでいる。好みの味を見つけるといいだろう。
ただ、レストランの難点は、東京よりも少し高くつくこと。もちろんお店にもよるが、日本だったら「今日は1,500円ぐらいで済んだかな」と思っていた食事で、「レシートを見てみると3,000円だった」なんてことはよくある。
さらに、お酒が好きなひとは要注意。とにかく高い。お酒にかかる関税と輸送コストが高くつくかららしい。普通の飲み会だったとしても、5,000円を下らないことはよくある。
一食300円で済ませる方法もある。
そんなところで毎日食べていたら生活できるわけがないので、地元の人の多くは「ホーカーセンター」に行っている。屋台が並ぶ屋外のフードコートのようなもので、300円もあればごはんとおかずがセットになったプレートが食べられる。
ただ、ホーカーセンターの難点は、清潔さと食材の質。日本に住んだことのあるひとの感覚からすると、外から見える厨房や食器、店員の服装は、残念ながら褒められたものではない。また、油が多く使われているらしく、健康面はこちらの社会問題になるほどだ。とにかく安さが魅力。
だから「自炊」が一番いいのだが、シンガポールは自炊をする人が少ないと言われている。食材の値段は、日本と同じか少し高いぐらい。スーパーマーケットに置いてある品数は十分だし、味も良い。東南アジアの果物や、海外のお菓子が充実しているのは嬉しい。
日本食だって食べられる。
こっちでいろんな国の料理を食べたけど、やっぱり日本人には日本食が一番だと僕は思う。そんな日本食が好きなひとも、シンガポールは安心してもらっていい。
多くのスーパーマーケットには日本食コーナーがあって、野菜などの生鮮食材から調味料まで、ある程度のものは日本のもので揃えられるし、こっちに進出している高島屋や伊勢丹のデパ地下や明治屋など、日本食専門のスーパーもある。
ただ、日本の食材はこっちでは輸入品になるわけだから、日本で買うよりも2倍近い値段になることもあるが。
それに、安くはないが日本人が経営する日本食レストランも少なくない。これは、外国の中でも、比較的日本と距離が近いシンガポールならではだろう。
ちなみに我が家では、週の半分ぐらいがレストランで外食、もう半分はできるだけ日本の調味料を使っての自炊。日本にいたときよりも、食費は少し高くなっていると思う。
ただ残念なことに、日本食は結局、こちらでは輸入品なわけで… 日本で食べていたような魚のお刺身の甘さとか、採れたて野菜のジューシーな味は出せない。だからときどき、日本に帰って「本場の日本食」が食べたくなる。